薬事法が改正され、これまでの医療用具は医療機器と名称が変わり、不具合の起きたときの人体に対するリスクの大きさにより、極めて低いもの(クラスI)、比較的低いもの(クラスII)、高いもの(クラスIIIとIV)の3つに分類されます。コンタクトレンズはリスクの高いクラスに入りました。この法律は平成17年4月1日から施行されます。リスクの高いものを高度管理医療機器と呼び、特別な扱いが必要となりました。
これを機会に手許にあるコンタクトレンズの説明書をよく読み、正しい使用法をもう一度、確認しましょう。
リスク分類クラスのそれぞれにはどんなものがありますか。
- クラスI:救急絆創膏、注射筒や注射針(特殊な目的以外)、水銀を使った体温計や血圧計、医療脱脂綿、医療ガーゼなど。
- クラスII:生理用タンポン、補聴器、家庭用電気治療器、輸血セット、コンタクトレンズ熱消毒器、電子体温計・血圧計など。
- クラスIIIとIV:人工心肺装置、除細動器、歯科用インプラント材、レーザー手術装置、人工腎臓装置、麻酔に関する機器、各種コンタクトレンズ(度なしカラーレンズを除く)、心臓ペースメーカ、 人工血管など。
以上のように、クラスIIIやIVのものは、医療機器として高度なもの、生命の維持に必要なものが含まれます。皆さんにとって、意外と思われますが、コンタクトレンズもこの仲間に入っています。
なぜコンタクトレンズはクラスIIIになったのでしょうか。
これは正しい知識を持たず、不注意に扱うために、眼に障害を起こすことが非常に多いからです。
コンタクトレンズを注意して扱っても、眼の表面に異常を認めることが珍しくはありません。まして不注意な扱いでは、不幸なことを招く可能性があります。クラスIII(高度管理医療機器)にふさわしい正しい知識が必要です。このことをよく理解し、快適なコンタクトレンズ・ライフを送るようにしましょう。
度なしカラーコンタクトレンズ(カラコン)はどうなっていますか。
コンタクトレンズは視力矯正(よく見えるようにする)を目的に使われています。ところがお遊び的に使われるカラコンは、本来の目的からはずれていますので、医療用具としての規制はありません。お遊び感覚ですから、レンズについての正しい知識を持たない方が多く、眼を傷めることが普通のレンズよりも多い状態です。
眼はとてもデリケートにできています。障害が起これば、失明することもあります。眼科医としては、眼をお遊びの対象とするには反対です。もし、カラコンを使うのであれば、クラスIIIと同じ注意が必要です。
眼障害例
コンタクトレンズによる眼障害例を4つ紹介します。カラコンによる障害例Cを除けば、他は十分注意しても、生じた障害です。なにもないと感じても、レンズ購入時に障害をみつけることが珍しくありません。このために定期検査が必要です。
眼障害例A
ハードレンズから、2ウィークタイプのソフトレンズにかえたところ、次第に異物感を訴えるようになりました。矢印のような、角膜のほぼ全面に細かい点状の病変を認めます。病変が分かりやすくなるようにフルオレセインという黄色い色素で染めています。
この原因として、ドライアイやケア用品のアレルギーが考えられます。病変部が広いために、ケア用品のアレルギーを疑いました。これがいらないワンディタイプにかえたところ、症状はなくなり、角膜の状態も良くなりました。病変部がせまい場合には、原因としてドライアイが多く、ソフトレンズ用人工涙液の点眼で治療することになります。
眼障害例B
2ウィークタイプのソフトレンズ購入時に見つけた病変です。矢印で示すように、角膜の、時計の文字盤でいえば12時から1時に相当する部分に、線状の病変があるのが分かりますね。この方は症状を訴えず、モニターに写っている自分の角膜を見てびっくりしていました。とりあえず、レンズを休み、良くなってから、レンズのカーブを大きめにし、酸素をよく通す、違うメーカーのレンズにかえ、経過を見ていますが、その後は問題を生じていません。
眼障害例C
高校生のカラコンによる眼障害です。友達の古いカラコンを入れ、明け方まで夜遊びし、帰宅して、レンズをとったあと痛いと訴え、来院されました。角膜の周り、ひどく充血しています。レンズを見たかったのですが、捨てたとことでした。幸いなことに、角膜にはほとんど異常を認めず、3日後には充血はなくなりました。
眼障害例D
ハードレンズによる障害例です。少し、ごろごろした感じがあったので、すぐにレンズをはずし、翌朝、充血がとれず、受診されました。この方は看護師、コンタクトレンズに対する知識は十分です。矢印で示す部分の角膜が混濁しています。おそらく、角膜に小さなキズができ、細菌が入ったのです。抗菌剤点眼約1週間で良くなり、視力も元に戻りました。しかし、角膜混濁は残っており、一生消えないでしょう。もし、これが黄色の矢印の場所、角膜の中心部にあれば、視力は落ちていたでしょう。不幸中の幸いといえます。