<はじめに>
21世紀は、光ファイバーなどマルチメディアの時代です。目はますます酷使されるでしょう。現在、人間の情報は85%が目から入ると言われていますが、これからは、90%以上になるかも知れません。一生、目のお世話になるのですから、仲よく大切にしていかなければなりません。わたしたちは目を使う仕事をしたり、テレビゲームに凝り過ぎたあと、目がショボショボしたり、ぼやけたりすると、つい「ああ目が疲れた」と言うでしょう。でも本当に目が疲れただけなのでしょうか。
一般に「眼精疲労」といわれるものは、いくつかの要因から生じてきます。
<眼精疲労の要因>
さて眼精疲労を大きくわけて4つのことが考えられます。
- 外環境:照明条件、温度や気象条件、音響刺激、化学刺激など。
- 内環境:全身病、身体疲労、病的体質など。
- 心的要素:精神異常、神経症、気がまえの不足など。
- 眼局所の異常:屈折異常、調節障害、斜位、不同視、不等像視、眼疾患。
これらはどれをとっても眼の疲れの原因になるものですが、眼精疲労の多くはそれぞれ単独でなく、お互いに関係をもって症状を起こしてきます。
従って眼精疲労は眼科医だけでなく、内科など他科の医師はもちろん、しばしば労務管理を含めた環境問題の解決も必要になります。ここでは主として環境に関連して起こる眼精疲労と、頻度の多い眼鏡との関係について述べます。
<VDT作業と眼精疲労>
いろいろな種類の近作業にともなう眼精疲労が報告されていますが、近年最も注目されているのがVDT作業 (Visual(video) Display Terminals)に伴うものです。画面の明るさ、グレア、ちらつきなどディスプレイ像そのものにも問題がありますが、長時間の作業は、眼の疲れだけでなく、頸、肩、腕症状など全身症状も起こしてきます。
本人だけでなく、管理側も、作業環境、作業状態の検討、作業の姿勢、適正な休息時間などの考慮が必要になります。
<眼鏡と眼精疲労>
正しい眼鏡を使用していないと疲れます。意外に多いのは遠視なのに近視と誤って凹レンズをかけている場合です。眼科で検査を受け、正しい眼鏡処方箋を発行してもらうことが大切です。
遠視性乱視の場合はとくに眼精疲労を起こしやすいものです。
近視で眼が疲れるものはわりに少ないのですが、過矯正の時には疲れやすいので注意してください。
45歳以後には適切な老眼鏡は絶対に必要です。まだ若いのに、まさかと思っている人が意外に多いものです。とくに照明が不十分な環境下では、いわゆる調節性眼精疲労を起こしてきます。眼科医で適切な老眼鏡を処方してもらいましょう。
<眼精疲労の予防>
眼精疲労の予防の第一は、肉体的にも精神的にも疲れをとることです。
目そのものの問題としては、緑内障や白内障など目に病気があって見えにくいのを無理して見ていないか、老眼鏡も含め日常使用している眼鏡が正しく処方されているか眼科で検査を受けてください。
作業や仕事の問題としては、机や椅子の高さを身体に合わせて調節してください。また、机の上の明るさにも気をつけましょう。明るすぎても暗すぎてもよくありません。パソコン作業時には、キーボードの高さやディスプレイに背景が映り込まないようにといった配慮も必要になります。
正しいメガネを使って、姿勢や明るさに気をつけても、根をつめて何時間も続けて読み書きや細かい手作業をするのはよくありません。たとえ3時間の作業をしなければならない時でも、続けて3時間する場合と1時間ずつに分けて間に10分ずつでも目を休める時間をとるのとでは、目に対する負担が大きく違ってきます。適当な時間に他の部署へ用事にでかけるとか、コピーをとりに行くとかといった目を使わない仕事を挟み込むことでうまくいくことがあります。これは目を休めるだけでなく気分転換にもなり、精神的にもよい効果があります。人間の集中力はそう長続きしません。適当なところで心にも休養を与えたほうが能率も上がるというものです。時間がある時はぼんやりすることも大切です。昔からよく言われている、遠くの山を見ることは目にとってよい休養になります。遠くの景色、できれば樹々の緑がいいのですが、ぼんやり眺めてください。このとき精神的にもぼんやりすることが重要です。
疲れたなと思ったらのんびり風呂につかり、早めにやすみましょう。 また余暇を上手に使ってください。家でゴロゴロするのも時にはよろしいですが、やはり外に出て身体を動かすことが必要です。テニスでもハイキングでも、子供とのキャッチボールでも構いません。これは身体にはもちろん、精神にも必要なことです。
<まとめ>
眼精疲労でお困りの方は、一度眼科専門医を受診し、眼精疲労の原因となっている背景を見つけ出し、その対策をたててもらいましょう。一人で悩まず、眼科を受診してみてください。