冬は非常に乾燥して、コンタクトレンズ装用者にとっては、トラブルの多い、全くやっかいな季節といえます。
数年前から毎日交換や2週間交換などの新しいタイプのソフトレンズが発売されて、コンタクトレンズ人口は増え、それにつれてレンズで目に障害を受けた人も増えています。そのなかにはレンズの障害のために失明した人もあり、視力低下の危険性のある障害も少なくありません。
コンタクトレンズは、処方を完全に行い、使い方を完全に守っても、目にいろいろな影響を与えます。コンタクトレンズを使う人は常に危険と隣り合わせであることを十分ご理解下さい。
今回はコンタクトレンズによる障害例の写真を掲示します。正しい取扱法を再度確認しましょう。
<1>新生血管と角膜浸潤
これらは手入れの悪いレンズ、低い酸素透過率のレンズ、長い装用時間などが原因となります。新生血管は角膜が酸素不足になり、結膜から角膜に血管が入り、酸素不足を補おうとする状態です。
<2>巨大乳頭結膜炎と角膜びらん
レンズ(特にソフト)の汚れによるアレルギーで、結膜に巨大乳頭が生ずることは稀ではありません。巨大乳頭は角膜をこすり、角膜びらんや潰瘍を生じる危険性もあります。
<3>角膜内皮細胞と角膜内皮細胞の働き
角膜内皮細胞は角膜に入ってくる水をくみ出し、角膜を透明に保つ働きを持っています。写真は20才女性、レンズ歴6年ですが、強度近視のためにレンズを長時間装用していました。内皮細胞が大きくなっているのが分かります。これは細胞数の減少を意味します。この年令では3の細胞数の写真が正常です(細胞数3,000個/mm )。同じように装用すれば、数十年先には角膜の透明性を保てなくなる恐れがます。
<4>細菌性角膜潰瘍
角膜のキズに細菌が感染して角膜潰瘍になり、広がっています。この方の場合は、幸い抗菌剤が効き治りましたが、潰瘍の痕が白くなって残り、視力障害が残りました。
(横浜市立大学 大野重昭教授提供)
<5>真菌性角膜潰瘍
角膜のキズにカビがつき、潰瘍となった症例です。カビの感染した状態を真菌症といい、治療が困難なことも多くこわい病気です。
(横浜市立大学 大野重昭教授提供)
この他にも、重症の障害にアカントアメーバによる角膜潰瘍があります。近年、日本でも報告され、徐々に増えてきています。アカントアメーバはもともと土や淡水に住んでおり、水道水から手を通じて、ケースに入ります。治療は大変困難です。
<終わりに>
目やコンタクトレンズの状態は刻々と変わって行きます。今まで大丈夫だったから、これくらいは大丈夫というわけにはいきません。異常に気がつけばレンズをはずし、眼科医を受診して下さい。無理をしてレンズを使えば、治るのに長い期間を要し、結果的には不自由することになります。時には最悪の場合も覚悟しなければなりません。
レンズによる障害のひどい例はほとんどが感染症です。これはレンズ、保存液、ケース、手指を清潔にすれば防ぐことが可能です。
レンズを正しく用い、快適なコンタクトレンズ・ライフを送るように心がけましょう。