秋は気候もよく、「スポーツの秋」と言われるように、あちこちでスポーツが盛んに行われます。どこの学校でも運動会が行われ、子供たちが元気に走り回る姿を目にすることができます。
しかしその一方で、スポーツによって怪我をする機会も増え、安全に配慮されている学校内でもスポーツ外傷が増える傾向にあります。これにともなって学校における目の外傷も秋に多くなります。
そこで今回は「学校における目の外傷」について、スポーツとの関わりを探りながらお話ししましょう。
ヒトは危険が迫ると本能的に顔をそむけ、瞬間に目を閉じます。感覚器として大切な目を保護する働きが自然に備わっているからです。一般に年少者では反射的な行動が遅いために、目を含めた頭部の受傷率が高くなる特徴があります。やんちゃ坊主がしばしば顔に擦り傷をつくっている姿を想像していただければ理解しやすいでしょう。
しかし幸いにも年少者では運動能力が低いために、スポーツで怪我をしても軽傷で済むことが多く、むしろ休み時間での友達との「けんか」「ふざけ合い」「遊び」が思わぬ重傷の眼外傷を招いています。
「眼球」は周囲を取り巻く豊富な「脂肪組織」で保護され、その外側は骨でできた「眼窩」という丈夫な壁で守られています。また角膜の前面は、上下の「眼瞼」が瞬時に閉じることによってこれを保護しています。ちょっとした打撲ぐらいでは視機能を失うことはありませんが、激しい打撲を受けたり、鋭利な物で傷ついた時には視覚障害を残すことがあります。
「眼球打撲」はスポーツ眼外傷で多く見られ、網膜に障害を及ぼし「網膜裂孔」や「網膜剥離」を招いたり、また水晶体に影響が及べば「外傷性白内障」を引き起こします。野球やサッカーなど、スポーツの中でも球技に用いられるボールによる打撲が数多く報告されています。一方、鋭利な物による眼外傷は角膜を貫くなど致命的な結果をもたらしますが、学校での発生は稀なようです。ただ竹刀の破片が刺さり失明した例も数例報告されています。
子供たちが所狭しと校庭を駆け回る姿は、見ていてすがすがしいものです。安全な校庭といえども怪我の危険はないとは言えませんが、怪我を心配するあまりに健全な体育活動までが萎縮しては困ります。青空の下で子供たちがのびのびとスポーツを楽しみながら、心と体を育んでいく姿を温かい気持ちで見守ってあげて下さい。