夏になるとどこの学校でも授業としてのプール活動が始まり、子どもたちの元気な声がプールサイドに響きわたります。子どもたちが着用しているスクール水着やスイムキャップの色は、安全のために、オレンジ色などカラフルなものも使用されるようになってきました。よく見るとゴーグルをつけて泳いでいる子も何人かいるようです。
ところでプールの水はウイルス性結膜炎などの感染予防の目的で、一定濃度の残留塩素を含むよう法律で定められています。ただこの塩素を含むプールの水は目の表面、角膜の涙液層に影響を与えることが分かっています。泳ぎの上手な子どもほど長時間、水中で目を開けているので塩素の影響を受け易く、個人差もありますが、プール後に目が充血し、痛みや乾燥感を訴えることがあります。
民間のスポーツクラブなどが主催する水泳教室などでは、少し泳ぎを覚えた子どもたちは皆ゴーグルをして泳いでいます。ゴーグルは塩素から子どもたちの目を守るだけでなく、水泳中に視界を良好に保つことができるため、水泳教室では基本的にゴーグル着用が義務づけられているようです。
学校では指導要綱に、水難事故を想定し、ゴーグルがなくても水中で目を開けて泳げるように訓練することが明記されています。プールに沈めた宝探しなど、遊びの要素を取り入れ、子どもたちが水と親しみ、自然に目を開けて泳げるような工夫がされていますが、この指導要綱があるために、学校でのゴーグルの普及が遅れているとのことです。
昔は水泳のゴーグルは高価で、保護者の負担も大変であったと思いますが、現在では安価で上質なものも出回っており、希望者には診断書がなくてもゴーグルの使用を許可する学校が最近増えてきました。近視や遠視向けの度数の入ったゴーグルも市販されおり、安全対策の面でも推奨できます。
ところで、学校に限らずプールサイドには目を洗う目的で洗眼器が設置されていますが、この洗眼器の使用についても注意が必要です。洗眼器から噴き出る水道水にも残留塩素がふくまれており、1分間の洗眼で角膜表面が変化し、感染しやすい状態になることが確認されています。そのためプール後の洗眼は不要とする専門家もいますが、洗眼には感染防止の働きや、「目に何か入ったらまず洗眼」という習慣を身につける教育的な意味もあります。このため現場の指導にあっては、単に「しっかり洗おう」と指導するより、「プール後の洗眼は5つ数えて」などの工夫が望まれます。
学校のプールで子どもたちが水と戯れている姿は夏の風物詩、どうか子どもたちの成長を温かく見守ってあげてください。